【新刊】『ストリートの精霊たち』川瀨慈 著 世界思想社刊 1,900円+税

映像人類学者の川瀨慈さんは、主なフィールド・ワークの場を、エチオピアの古い都、ゴンダールに置いています。

この本は、公用語のアムハラ語を縦横無尽に操る川瀨さんが、ゴンダールのストリートで仲良くなったストリート・チルドレンや娼婦、物乞い、霊媒、「精霊」と呼ばれる人達、門付け芸人、ストリート・ミュージシャン達との交流と、彼らの物語を書き綴った絶対に読んで欲しい1冊です。

川瀨さんのアムハラ語は半端なく、荒川区にエチオピア人コミュニティがあるのですが、彼らのたまり場のレストランに行って、そこにいるエチオピア人達を爆笑させまくり、あまつさえ在日期間が長いおっちゃんに、最新のスラングを教えて感謝されていました。在日エチオピア大使からも「川瀨はエチオピアの格言の知識がハンパない」、とお墨付きをもらってました。

川瀨さん自身が、ストリートの悪ガキみたいな性格なので(褒め言葉です)、ゴンダールのストリートの人達と、気が合うんでしょうね。

そうした出会いは、必ずしもハッピーなものばかりではなかったようです。

この本の最後の方に出てくるバッビエという身寄りのない少年は、公的教育は受けてなかったけれど、賢くて川瀨さんを兄と慕い、フィールドワークの助手をずっと勤めていました。学校に行きたいと言い出したので、2年半にわたって授業料や生活費を仕送りをしていたのだけれど、実は学校に行っていない事が発覚。川瀨さんは激怒して関係は終わりました。

その後周りの人達から、バッビエが魂が抜けたようになって、酒やタバコにおぼれていると聞きます。そして、川瀨にも落ち度があるんじゃない、とアドバイスされたりするので、いい話になるのかなー、と思っていました。先日川瀨さんにその事を言ったら、「あいつは許せねえ!」の一言。悪ガキだな〜。

気流舎の本は新刊本ですが、川瀨さんのサイン入り。必読です!

こちらはゴンダールのストリートで暮らす子ども達にお金を渡して、物売りをさせて、半年後には……、というヨーロッパの学会で、こんなことさせていいのか、と論争を巻き起こした川瀨さんの本領発揮のドキュメンタリー。

http://www.itsushikawase.com/japanese/

この本にも出てきますが、ラリベロッチという、エチオピアの被差別の門付け芸人に密着したドキュメンタリー。川瀨さんも作品中で金儲けか、みたいなこと言われてますね。

http://www.itsushikawase.com/japanese/lalibalocc.html

(tintin)